学校は転校させられたが、俺も姉さんも人付き合いが苦手で、どうせ元の学校にも友達はほとんどいなかったから、そこまで負担はなかった。
それから一年ぐらいは割と平和だった。
──しかし、次第に様子が変わっていった。
母は、俺の顔を見て気分が悪そうな表情をすることが増えた。
それだけなら気のせいで済ませることができたかもしれないが、だんだん俺にだけ辛く当たるようになっていき、しばしば暴言を吐くようになった。
癇癪を起して、皿なんかを投げつけられたこともある。
その理由は、暴言の内容を聞くうちに、何となくわかった。
俺の顔や纏う雰囲気が、あまりに父そっくりだった。
姉さんも顔はそこそこ似ていたはずだが、やはり父のことを生々しく思い出すのは、息子である俺の方だったらしい。
結局、母の親戚たちが父と連絡を取り、俺は中学進学を機に、再び父のいる家に戻った。
その後、母とは事務的なメール以外で連絡を取ってはいない。



