あれは遠坂くんの言う通り、一年の春のことだ。

あの日私は、クラスメイトと仲良くなるために焼いてきたクッキーを無事に配り終え、さらに由梨と仲良くなれたことで少し浮かれていた。


浮かれた気分だったからか、何となくいつもと違う場所を通ってみたくなり、中庭に行ってみることにした。

放課後だったし別に誰もいないだろうと思っていたけど、その予想は外れ、そこのベンチでは男子生徒が一人横になって眠っていた。

起こさないようにしないと……。

そう思ってそっと通り過ぎようとしたのだけど、どうやら彼は起きていたようで、私が通り過ぎる瞬間、……お腹の鳴る大きな音が鳴り響いた。

それを聞いた私は、知らないふりをしておけば良いものを、堪えられずに吹き出してしまったのだった。



『あはは、今、すごい音だったね。今日クラスの子に配るためにクッキーたくさん焼いて持っていたんだけど、ちょっと余ってるから良かったら食べて!』