「違う。初めて会ったのはそれよりもっと前」

「え、もっと前?」

「うん。……やっぱ小野山さんは覚えてないか」

「えっと、どういうこと?私、あの日より前にどこかで遠坂くんに会ってた?」



思い出そうとしてみるけど、遠坂くんと知り合った記憶はない。

だって、こんな有名人と知り合ったら普通忘れないよね……?


あ、だけど遠坂くん、何故か私の名前知ってたんだよな。



「小野山さん、一年の春にクラスメイトに渡すためにクッキー作ってきたことあったでしょ」

「あ、うん。何で知ってるの?」

「クラスメイトに渡して余ったクッキー、中庭で休んでた俺にくれたの、覚えてない?」






一年生、春、クッキー、中庭……。



「あ」



覚えてる。

いや、正確には“思い出した”。



「中庭のベンチで、すごいお腹鳴ってた男の子!」

「ちょっと嫌な思い出し方だけど……。それ」