思わず返事しちゃったけど、何故いきなり下の名前を……。
遠坂くんは返事があると思っていなかったのか、驚いたように私の方に顔を向けた。
「ごめん、声に出てた?」
「う、うん」
「いや、綺麗な名前だよなって思って」
「なまえ……そうかな?私、小学生の頃とかよく迷子になってたから、友達に『在花の在り処を探せ~』なんてよくからかわれたりもしたけど」
「はは、何それ。……いや、漢字がさ、『花が在る』って書くじゃん」
ああ、漢字ね。
私は幼い頃に幾度となく聞かされてきた名前の由来を思い出す。
「えっと確か……そこにいるだけで、まるで花が在るかのように周りを笑顔にさせる子になって欲しい……って願いが込められてるんだったかな。その由来聞いちゃうと、完全に名前負けしてるなって気がするんだけどね」
「何で?ぴったりじゃん。初めて小野山さんに会って、名前知ったときからずっと思ってた」
「えっ?」
「花が在るかのように、人を温かい気持ちにさせる人」



