隣の不器用王子のご飯係はじめました




「傘が無くなっちゃって」

「無くなった?」

「誰かが間違えて持ってったのかも。……遠坂くん、余分に折り畳み傘持ってたりしない?」



ダメもとで尋ねると、遠坂くんは申し訳なさそうに首を振った。



「そっか。遠坂くんも帰るとこだよね。またね」

「あの、小野山さん……。傘、一緒に入る?送ってこうか?」

「えっ⁉良いの?」



遠坂くんはうなずいて、私に向けて傘を差し出す。


ありがたく入れてもらおうとした私だったけど、由梨に「気を付けて」と言われたのを思い出して、一度注意深く周囲を見渡した。

……よし、誰もいない。

私の中でも、花火大会のときに写真を撮られていたことがすっかりトラウマになっている。



「失礼します……」



そう言いながら遠坂くんの隣に並んだら、少し笑われた。