鵠ノ夜[中]




その来客は、昼頃に来るらしい。

翌朝彼女が母親の元に面会に行った後、それぞれが稽古の用事でばらばらになったが、昼飯の時間は全員重なっていた。



だから当然のように、いつもと変わらず全員で過ごしていた時のこと。

面会を終えて帰ってきた彼女が部屋に入ってきたかと思えば、その後ろには──ふたつほど歳が下であろう女がいた。



「お嬢、どしたのその子〜」



「言ったでしょう? 胡粋に来客だって」



来客って、歳下の女だったのか。

何を言われたわけでもないが、勝手に仕事上の相手だと思い込んでいたから、拍子抜けする。



「俺に来客って……(このみ)だったの」



視線の中心にいる胡粋は、ぐっと眉間を寄せた。

どう見たって、歓迎してるわけではない。むしろ嫌がってる。




「っていうか、なんでわざわざ来たわけ?」



いつもの胡粋とは違う、冷たい物言い。

突き放すようなそれに傷つくかと思いきや、彼女の方は慣れてるみたいにそれを交わして、「こーちゃん」と口を開いた。



「約束、したじゃない。

こーちゃんの入学予定だった中高一貫校に菓が合格したら、付き合ってくれるって……」



……恋愛がらみのことかよ。

真面目な話かと思ったのに、コイツもめんどくせーネタ持ってやがったのか。



「なのにこーちゃん、約束の高校受けるどころか、勝手に関東に出てきて……

菓、こーちゃんから何も聞いてない」



「言ってないからね。

そもそも俺はあの一貫校受ける気なんてなかったし。俺がこっちに来たら、お前が俺のこと諦めるかなって思っただけだよ」



お前、なんて。

レイには絶対言わないくせにな。