鵠ノ夜[中]




「あんみつってたまに食べると美味しいよね」



「……さっきまで『団子が良かった』って文句言ってたのに、途端に手のひら返したな」



「あんみつだって和菓子だよ」



「こいちゃんほんとに甘いもの嫌いそうな顔して、和菓子だいすきだよねー。

ぼくでも心配になるぐらい食べてるもん」



「和菓子で死なないから大丈夫」



「食べすぎはよくないと思うけどねえ」



わたしが、何か言わなくても。

自然と彼らだけで話が進むのを見る限り、仲が良くなったのは充分に伝わってくる。黙々とあんみつを食べているわたしに、特に話題は振られない。




「あ、シュウ。

チョコレート、ひとつちょうだい?」



「……チョコも欲しかったなら言えよ」



「そこまで欲張りじゃないわよ、わたし」



一番にあんみつを食べ終えて、チョコレートを取り出した彼にお強請りしたら一つくれた。

味はミルクで、ビター派なわたしでも美味しく食べられるチョコレート。さすがデパ地下で売られているものとあって、かなり美味しい。



「なんだかんだお前も甘いもん好きだな」


シュウの言葉に、よく見てくれてるじゃない、と口角が上がる。

そのまま「どうしてシュウがわたしに電話してきたの?」と聞いてみれば、雪深と胡粋のどちらがわたしに電話するかを揉めたらしかった。



すぐそこにいたはとりと芙夏はその話に加わっていなかったから、ふたりの相手が面倒になったシュウがかけてきたという結末。

なんというか……どこにいても、普段通りだ。