「…最近、蒼空さんおかしくないですか?」


「やっぱり菜々子ちゃんもそう思う?」


「はい…」


ベンチの隅の方で菜々子ちゃんと尚輝くんが話してるのが聞こえてくる。


どれだけ意識しまいとしていても、“蒼空”という単語に反応してしまう。


「明らかにピッチングの質が下がってる」


「それに…なんか…何もかもが荒いですよね」


「彩絢ちゃんに浮気されてショック受けてんのかもな」


…野球部でもその噂か……。


「そういえばそんな噂も流れてますね。まさか尚輝さん、信じてるんですか?」


「まさか。そんなわけないじゃん。彩絢ちゃんはそんな子じゃないでしよ」


……!!


尚輝くん…菜々子ちゃん……。


私を信じてもらえた嬉しさに浸る余裕なんてなく、尚輝くんの一言が鋭く突き刺さった。


「アイツの身体で何か異変が起きてる」