「遅い!」

「仕方ねーだろう、業務が少し長引いたんだよ。」

「はいはい。今日もお勤めごくろーさまです。今日は私とのディナーだったんじゃないの?」

「だからこうしてお前の店に来てんだろうが!客になんて口の利き方だ!」

「せっかくこの店の試食会に招待してあげたのになんですか?その態度は!」

言い合っているうちにどちらからかお腹が鳴る音が聞こえてくる。
お互いにくすくすと笑いだし、久しぶりだの腹が減っただの他愛もない会話をした。

私とあいつ(エン)は恋人だった。エンは警察官だ。
私は個人経営のレストランでオーナーシェフといったところだ。
今日は久しぶりにエンと会う。
お互いに仕事の合間に連絡は取るが会うのはこうして2人の都合が良いとき。
今日はエンが仕事が早く終わるというので、私の店が終わった後にこうして新作料理を試食するといった名目で会うのである。

今日は和食が作りたくなったから和食御膳だ。
普段はパスタやらラザニアやら洋食メインで作っているが、最近和風な味付けや料理ににハマっているのだ。

北寄貝が手に入ったので、北寄ご飯に。茶碗蒸し、天ぷら、澄まし汁。新作料理というよりも自分が食べたいものを作っただけだが、エンは満足そうにしている。
こんな日が本当に幸せだった。