「――ごめんなさい、芹、恋できない」
芹の足が止まり、振り返る。
「離れてほしくない人がいるの」
「…ん、そっか、麻柴そんな顔すんな
俺は麻柴のこと女の子として好きだったよ。でも友達としての麻柴も好きだ。
だから、これからも友達でいてくれる?」
「いいの?」
「麻柴は俺のこと友達として好きでいてくれるんだろ?」
「うん、もちろんだよ」
芹は家に向かっている間も普通に話してくれた。
きっとこういう所が周りから好かれる理由なんだろうな。
ごめんね、ありがとう、芹
「――驚くと思うけど、ごめん」
そう言って、鍵、ではなくインターホンを鳴らした芹。
ご両親がいるのかな…?
――ガチャン
「おかえり、お前鍵忘れたろ」
え…どうして
「五月先輩…?」
「あ、羽結だ」
一ヶ月ぶりの先輩の姿に、胸が鳴り止んでくれない。どうしてここに…
「俺の兄貴」
…兄?弟?brother?血縁?
家に着くまでに雨の下で話し込み過ぎて
私も芹も濡れてしまったので、家にお邪魔してタオルまで貸してもらった。



