にこっと笑った。


その顔がそんなに怖かったのかな。


すぐにどこかへ行ってしまった。


それを見送って、ふぅと息をついた。


すぐにまた変装をする。


眼鏡をかけて、ウィッグと黒のコンタクトをつけた。


この格好の方が目立たなくていいんじゃないかなと思ったんだけど……そうでもなかったみたい。


でも、絡まれても全然平気。


私、喧嘩はできるんだ。


小さい頃から空手と柔道を習っていて、ほとんど負けたことがない。


見た目からはそう見られないけど……


私は背が小さくて、150cmギリギリという小ささだ。


そのせいで、ひ弱に見えるみたい。


まぁ実際、喧嘩している時以外はいつもビクビクしてしまう。


喧嘩してる時とのギャップがやばいって姫だった頃よく言われてた。


その頃のことを思い出しそうになって、ぎゅっと唇を噛みしめる。


ダメ……思い出してはダメ。


苦しくなるだけだから。


こうして私があてもなくさまよってるのには理由がある。


でも、その理由を今は考えたくなかった。


「ねぇ、君何してるの?」


誰かと思って振り返ったら、男の子が立っていた。


長い前髪をピンで留めてる女の子みたいに可愛い男の子。