……あぁ、あれは夢じゃないんだ。


現実なんだ。


そう思ったら悲しくなってきて、ポロッと涙が流れた。


「……っ大丈夫です。気にしないでください」


慌てて涙を拭おうとしたら、流羽さんの手が優しく私の頬に触れた。


ドキッとしてそのまま固まる。


そのまま動けずにいたら、流羽さんが優しく私の涙を拭ってくれた。


「我慢する必要はないから。辛ければ、思いっきり泣けばいい。俺が受け止めるから」


正面から言われた優しい言葉。


それだけで泣きそうになる。


この人は、流羽さんは優しい。


「……ありがとうございます」


「落ち着いたら、降りてきな。俺は先行ってる」


バタッと音がして、流羽さんは出ていった。


これも、流羽さんの優しさだよね。


……不意に昨日の会話を思い出した。


姫にならないかって聞かれたけど、あれは何だったんだろう……


本当にもう1度聞かれるのかな……?


いつまでもここにいるわけにもいかないから、黒のコンタクトレンズを入れて、眼鏡とウィッグをつけて、部屋を出て考える。


食堂に着くと、マコさんと菜摘さんしかいなかった。


「あ、心優ちゃん!おはよう!」


「おはよう、心優ちゃん!」


「お、おはようございます、マコさん、菜摘さん」 
 

流羽さんはもう行っちゃったのかな……?