窓の外の景色が変わっていく。


雑多な街の風景はいつの間にか遠のいて、眩しい緑の割合が大きくなる。

バスは、今、自分たちの住む場所から少し離れた森へ向かおうとしていた。



一泊二日の林間学校。
昼前に山の麓に到着する予定だ。



 緊張していた。

はやく、夜にならないかなと思う気持ちと、夜になったらどうすればいいのだろうと戸惑う気持ちが、バスと共に揺れている。


直近の影君の手紙には、“宿舎の裏で待ち合わせをしたいです”と書かれていた。

まだ、朝なのに、夜になったときのことばかり考えてしまう。



 窓に額をつけて、そっと息を吐きだしたら、隣から、「文子ちゃん、酔っちゃった?」と、久美ちゃんが聞いてきた。

バスの座席は自由に決めることが出来たから、私と久美ちゃんは当然のように一緒に座った。