森田君は、放課後まで、人に囲まれて楽しそうに笑っていた。彼の人柄がいいからなのだろう。
四月の初めに、貧血で倒れたクラスメイトに保健室まで連れ添ってあげたのを知っている。
それから、いつもにこにこしているから。きっと、皆、彼といると楽しいのだと思う。
極めつけは、彼の容姿だ。
かっこいい。久美ちゃんも、そう言っていた。
遠目でしか見たことがないけれど、確かに、森田君は、綺麗な目をしていて、顔の輪郭がしゅっとしていて、かっこいい。
森田君の全てが、私とは正反対だと思う。
私は、クラスで唯一の友達である久美ちゃんにも気を遣ってばかりだし、誰かと心の距離を近づけることがとても苦手だ。誰も傷つけずに生きていきたい、そんなことばかり考えている。だから、あんまり人と深く関わることをしたくなかった。
放課後、森田君のメモに書かれた場所に行こうかどうか迷っていたら、私の机の前に二人の女の子がやってきた。
クラスメイトの、夏目さんと梨木さんだ。二人とも派手な見た目をしている。
森田君とも仲がいい人たちで、もしかして、この人たちが悪戯で私の下駄箱にメモを入れたのだろうか、と一瞬だけ疑いの気持ちをもってしまったけれど、「日直、」と夏目さんの口が動いたから、違うのだと分かった。



