きみは溶けて、ここにいて【完】






「きっと、大丈夫に、なれるよ、森田君」


 恐る恐る手を伸ばして、彼の胸に、とん、と人差し指の先をつける。震えてしまっていた。だけど、構わずに、触れたまま、口を開く。




「影君は、ここにいる」


 だから、大丈夫に、なろう。


 そういう気持ちで笑ったら、森田君は瞬きを落として、ゆっくりと小さく頷いた。


「保志さん」

「う、ん」

「俺、きっと、大丈夫に、なれる」

「うん」

「……影は、溶けて、ここにいる」

「う、ん」

「信じてみようって、思う」



 そう言って、森田君は、穏やかな笑みを浮かべた。

それは、ふ、と抜けたような、だけど、光に満ちたような微笑みだった。

なんとなく、森田君と、森田君に混ざった影君の、ふたりの笑顔であるような気がして、嬉しくなった。




 朝の白い光の粒子が、静かに、降っている。


 その中で、私たちは、しばらく、見つめ合っていた。



(了)