きみは溶けて、ここにいて【完】





 何を言おう。どんなふうに伝えよう。

怖くないわけじゃない。
ずっと、怖いものは怖い。


人を傷つけて、取り返しのつかないような言葉を投げた過去。それは消えない。

だけど、だからこそ、大切に出来るんだって森田君は言ってくれた。言葉は傷つけるだけじゃないって、私、教えてもらった。



 伝えたい。

だから、はやく、来てほしい。



 そう思いながら、しばらく、下駄箱に背を預けたままでいたら、生徒玄関の向こうから、こつこつ、と靴の音が近づいてきた。


話し声はしない。音のほうへ、ゆっくりと顔を向ける。

それとほとんど同時に、「おはよう」と、朝だからか少し不透明な掠れたテノールが鼓膜に届いた。




 待っていた人が、私の目の前に立つ。



向かい合うようにして、数秒、朝の光の中で見つめ合う。伝えたい、という気持ちが膨らんでいく。届けたい言葉が、たくさん溢れてくる。


私は、そっと、口を開いた。