ベッドに横になって、もう一度、深呼吸をする。
手放そうと努力して、撫で続けていた喪失感をもう一度、自分の大切なこころの片隅に手繰り寄せる。
そして、目蓋を閉じた。
控えめなうす暗い表情、猫背の後ろ姿、ふ、と穏やかに笑う音。そうか、消えてなんてないんだ。
ただ、あるべき場所に辿り着いて、眠っただけだ。
永遠の夏は、ずっと、
森田君の胸の中に、あったんだ。
次の日、朝日が昇る前に目が覚めてしまった。
穏やかに、興奮していた。
心地の良い矛盾だった。
家族団らんの朝食の時間もパスして、学校へ向かう。朝の新品の空気に満たされながら、私は歩いた。
学校へ着くと、まだ、誰も来ていないようで、校舎はしんとしていた。
森田君の姿もない。生徒玄関に、朝の光が差し込んでいる。
その眩しさでさえ、今は、私の味方をしてくれているみたいで、昨日むくりと湧き出た勇気はひとつも萎むことがなく、私は、ただ森田君が来るのを待っていた。



