きみは溶けて、ここにいて【完】





影君が、言っていたはずだ。


森田君も、影君も、お蕎麦が好きで、恋愛映画が苦手。そういった具合で、最初は好みが同じだったけれど、考え方が違って、少しずつ変わっていった部分と、変わらなかった部分がある、と。 



 もう一度、森田君の手紙の三枚目だけ、最初から読む。




「前の、俺なら、絶対に、読まなかった本も、最近は、読むように、なった、」



 ひっそりと声に出して、なぞっていく。

 もしかして、と思った。



 そう思ったら、いてもたってもいられなくなって、今までどうしても開けられなかった引き出しの鍵穴に、鍵を差し込んでいた。


思い出にするにはまだ全然時間が足りなくて、影君という存在が濃すぎる場所。



おそるおそる、開くと、やっぱり優しいだけではない、痛みの伴う懐かしさに襲われる。

だけど、今はそれどころではなかった。