きみは溶けて、ここにいて【完】





 たらればを、乗り越える。

そうしたら、影君は、思い出になってしまうのだろうか。

そうだとしたら、私は、まだ、怖い。




 森田君は、やっぱり、ずっと少しだけ様子がおかしかった。無理をしていると私は感じていた。

だけど、何も出来ないまま、こっそり、彼のことを見ていることしかできなかった。


もう、永遠に、
二人だけで話すこともないのかもしれなかった。



 そうやって、本当に、私たちは、大人にしまうのかと思った。大人になるということは、きっと、忘れていくということ。

だけど、そんなのは、本当は嫌なんだ。



 もう一度だけ、落ち着いて、確かめ合うべきだと思った。


影君という存在がいたことを。影君のことを。

私は、そうしたかった。


だけど、その願いを押し通して森田君を傷つけることはしたくなくて、そんな勇気さえ出なくて、結局、私は、森田君が大きな円の真ん中で頑張って笑っているところを、こっそりと、諦めたような気持ちで瞳に密かに映すことしかできなかった。