想いを粉々にしたくなくて、自分の臆病な気持ちだけを抱きしめた。

結局、私はそのせいで、影君に、たくさんの言葉をもらった夜を粉々にしてしまったのだと思う。



 あれから、どんな気持ちで影君が自分の家に帰ったのか、どんな気持ちで森田君と入れ替わったのか。

想像すると、あの薄暗い表情が頭に浮かぶ。

想像の中の、影君は、笑ってくれない。
当たり前だ。私のせいだ。



 影君からの手紙は、二人で会った数日前にもらったきり、届いていなかった。


朝、下駄箱を確認するたびに、ごめんね、と思う。ううん。それよりも、違う言葉を、私、本当は伝えたかったんだ。

逃げたのは自分のくせに、逃げた後に、そんなことをようやく思う。後悔する資格もないくせに、だ。



 教室には、森田君がいるけれど、明るくて張りのある声が耳に届くたび、苦しくなった。


記憶を共有しているかどうかなんて、もはや、どうでもよくて。ただ、影君の存在は今どうなっているのか、聞きたいような、絶対に聞きたくないような、両極の感情の間で私は揺れていた。