影君は、私から目を離して、ゆっくりと空を仰ぎ見た。
その横顔に、既視感を覚えて、何にも森田君とは重なってほしくはないのに、と身勝手なことを思う。
瞬きの度に、諦めが零れているような気がして、私は、それをどう掬えばいいのかも、影君は掬ってほしいのかも、分からなった。
「僕は、そうやって、ずっと、誰にも知られずに、息をするしかないのだと思って、いた」
「……う、ん」
「―――だけど、突然、雨が、止んだ」
影君が、目蓋を下ろす。
口角が、控えめにあがった。
薄暗いのに、澄んだ空気に包まれているような心地になる。
「誰かが、僕の上に、傘を、さして、くれた」
「…………」
「―――“濡れていたかったら、ごめんなさい”そう言って、傘と花柄のタオルを僕にくれた、ひとが、いた」
あ、と、掠れた声を出してしまった。



