きみは溶けて、ここにいて【完】





影君の声が鼓膜を揺すった瞬間に、“やっぱり”と思ってしまったことが悲しくて、遅れて、胸が痛くなる。

笑うことなんてできず、どうしても顔が歪んでしまって。だけど、暗闇はほとんどのことを正しく映さない。

それだけは、今、夜であることが有難かった。



 影君は、ブランコを揺することなく、しっかりと地面に足をついて私を見ていた。だけど、やっぱり、震えているような気がする。


森田君の、影君の、身体が。


夜に反射する銀色の鎖を握る手に力をこめたのか、影君のブランコの鎖が微かにしなった。





「文子さん、昔の、話をしてもいい?」

「昔の、話?」

「うん。昔の話。文子さんと陽が出会う、前のこと」

「っ、聞き、たい。うん。……影君が話したいこと、全部、私は、聞く」

「……ありがとう」



 私も、地面にしっかりと足をついて、ブランコを揺するのをやめた。


そうしたら、もう、何の音もしない。
ただ、私と影君の呼吸の音だけになる。


影君が話し出すのを待っていた。

聞いてしまうのが怖い、と思いながら、待っていた。



そして、影君が、ゆっくりと、話し出す。