きみは溶けて、ここにいて【完】






 そっと影君のほうに顔を向けると、目が合って、困ったように彼は目を細めた。


暗いからだろうか。きっと、そう。翳りのようなものに覆われている。絶対に、暗いからだ。ただ、そう思いたかった。


会えたことが嬉しい。
だけど、それよりも、恐ろしくて。

半透明の世界にいるような気分でいる。




「文子さん」

「……はい」



 彼は、何を言うつもりなのだろう。



 聞きたい。聞きたくない。
それを、私は何も決められないね。

言葉はそのひとのもの。
誰にも決められないね。


猫背の半身を、隣で見つめる。影君が、そっと唇を開く。震えているような、気がした。



「ごめん」

「う、ん」

「……きっと、僕は、もう少しで、消えてしまう、と思う」

「……う、ん」



 夜に、声が溶けてくれない。