きみは溶けて、ここにいて【完】






 違う。

猫背だ。弱々しい、何かを恐れているような表情。きっと、とても自分に自信がない人。



 今、目の前にいるのは、森田君じゃない。


そう気づいたのと、「影、なんだ」と、前に立つ男の人が言ったのは、ほぼ同時だった。



「どうしても、会いたくて、……ごめん。こんな夜に、呼び出してしまって、大変迷惑だと分かってるんだ。ごめん」



 そう言って、彼は、申し訳なさそうに頭を下げてきた。



 また、会いたい。

そう言葉にして伝えてしまった日から、もう随分と時間が経ったような気がしている。



謝らないで、と思いながら、ふるふると首を横に動かす。

 影君は悲しそうに顔を歪め、それでも、ほんのわずかに安堵しているような、不思議で切ない表情をして、「会えて、嬉しい」と言った。



「私、も。……私も、嬉しい。やっと、会えた、から」

「……うん。ごめん。不自由で、ごめん。僕は、本当に、だめで」



 三角公園の中に入って、遊具のところへと行く。夜の風にひとりでに動くブランコに私と影君は腰かけた。


辺りは、しんとしている。
街は眠りかけている。

身体を揺らすと、ギィ、と錆びついた音がした。