「廊下にいたけど、俺の名前が聞こえたから。俺のこと話してるのかなって思って」
「べつに? 陽には関係ないから」
「うわ、悲しいし。関係ないことはなくない? なに? 教えて」
森田君は笑っているのに、逃がさないという風に、「なに?」と島本さんたちに聞く。
それで、とうとう折れたのは、島本さんの後ろにいる南さんだった。
「陽君と、保志さん、付き合ってるのかって、保志さんに聞いてた」
「ふうん。そんなの、俺に聞けばいいじゃん。いつも話してるんだから」
「それはそうだけど……」
気づいているのに、気づいていないふりをする。わざと、彼女たちが質問をぶつける相手に私を選んだこと。
いま、あえて、彼は鈍感に振舞っているような気がした。
「付き合ってないよ」
な、保志さん、と同意を求められ、何度も頷いた。



