「違うの」
「え、何が?」
「……ちがうんだ」
どう誤魔化せばいいのか分からなくて、ただひたすらに、首を横に振る。
はやく、森田君が戻ってきてほしいと思った。
それでどうにかなるようなことでもないのかもしれないけれど、三人の、その他のクラスメイトの視線が痛くて、呼吸すらままならない。
こうやって、視線を浴びることが本当に苦手なんだ。みんな敵であるような気がしてくる。
四面楚歌という言葉を国語の授業で知ったとき、ああ、私のためにある言葉だって思った。
まさに、今そういう心地でいる。
「保志さん、陽のこと好きなの?」
それは、あなたではないのか。
森田君を好きなのは、島本さん自身でしょう。
久美ちゃんが言っていた。
振られたのだと。真偽は分からないし、私には、到底言い返せる勇気なんてない。
だけど、首を横に振ることもできない。
森田君のことが、嫌いではないから。
どうしたって、誰かに嫌な思いをさせてしまうような気がした。



