きみは溶けて、ここにいて【完】





だけど、ひとつだけ。
思い当たることが、あるとするならば。




「―――陽と、付き合ってるの?」



 やっぱり、そのことだった。


尖っている細い声に、息が止まる。潜められた声ではなかった。

周りの人にも聞こえるような声量だ。目だけを動かして、辺りを確認すると、案の定、私たちのほうを見ているクラスメイトが何人かいた。



 どうして、私に聞くんだろう。
どうして、仲のいい森田君に聞かないんだろう。


そう思い、森田君を探す。

トイレにでも行っているのか、教室に彼の姿はなかった。


ああ、だから、このタイミングで、島本さんは私に聞いてきたのかもしれないと気づく。




「どうなの?」

「……付き合ってない、よ。そんな、私なんかが、森田君となんて」

「ふうん。でも、林間学校の夜ね、陽、いなかったんだよね。それに、保志さんと陽が宿舎の近くで二人でいるとこ見た人いるんだけど、」



 見られていたんだ。


きっと、蛍を見に行ったことは知られていないだろう。

だけど、どのタイミングで気づかれてしまったのか、誰がそれを島本さんたちに言ったのか、頭にめぐるたくさんの疑問に押しつぶされてしまいそうになった。