きみは溶けて、ここにいて【完】





影君は弱さだと言った。
負のエネルギーから生まれた存在。

だけど、優しいんだ。

優しくて、私にとっても森田君にとっても、とても大切な人だ。



 私は、どう、思えばいいのだろう。
何を望めばいいのだろう。


正解が分からないのに、ただ、影君に会いたい気持ちと、森田君の過去を傷つけないように抱きしめたい気持ちだけは本当で、その狭間で泣いてしまいたくなった。


森田君は、相変わらず、空を見上げながら、言葉を紡ぐ。


「本当に俺、前には、進んでると思う。人って、留まれないんだ。変わらないことの方が難しい。だけどそんな中で、ずっと、忘れられないこともあるんだよな」

「……う、ん」

「父親と母親、俺の親権を二人で争ってた。そんな風に、自分が母親にも父親にも愛されてるんだって分かりたくなかったけど。で、さっきも言ったけど、父親が俺の親権をとって、母親とは、もう会わないことになった。俺は、会いたかったけど、知らない間に、そういうことになってた。言えなかったんだ。会いたいって言うことが、我儘の域を超えているような気がした。それで、母親に会うのが最後だっていう時に、母親に言われたんだ」



 森田君が、ゆっくりと視線を私に向けて、苦しそうに笑った。


忘れられないこと。
それは、きっと、癒えない傷。

星は、つねに瞬いているわけではない。