きみは溶けて、ここにいて【完】





 森田君はしばらく私の班の調理場にいて、笑いながら私に話しかけてきた。うまく相槌を返せているかは定かではなかったけど、なんとか会話を続ける。


そうしているうちに、なぜか、浜本さんと吉岡さんが戻ってきた。まだ、下準備は終わっていないのに、どうしてと思っていたら、「なんで、陽がいるのー?」と吉岡さんが森田君に聞いたから、森田君がいるからここに来たのだと気づく。



「だって、保志さん、一人だったんだもん。なんで、誰もいないのー? って聞いてた」

「あー、なるほど」

「なるほどじゃねーって。俺、ここの班の、人参、むいたからな」

「なにそれー、陽、ありがとう」

「もう、むかない。だって、これ、俺の腹にはいんないし」



 浜本さんも吉岡さんもケラケラと笑いながら、まだ切られていない野菜に手を伸ばした。


どうやら、下準備を手伝う気になったようだ。

手が汚れるのが嫌だと言っていたのに、簡単に。それ程度の”嫌”だったみたいだ。