「でも、森田君は、森田君の班の、」
「俺は、米の係だから。野菜は、女子が担当するって言って、みんなでやってるよ」
「……そっか。でも、悪いよ。私は、大丈夫。気持ちは、すごく、嬉しいです」
「保志さん、俺の班は、みんなでやってんだよな」
「そう、なんだね」
「鮫島は?」
「あ、鮫島君もお米を担当するって」
ふうん、と森田君が唇を少し尖らせた。
影君ならば、絶対にそんな表情はしないだろうな、と思いながら、また包丁を握って下準備を再開する。
森田君は、隣で人参の皮をビューラーでむき出した。
有難くて、申し訳なくて、この状況を誰かに見られて何か誤解されたらと言う不安。入り交じって、私はどうすればいいのか分からない。
そんななかで、ごめんねを彼に言うことが怖くて、「ありがとう」とだけ言った。
「……保志さん、よくオッケーしてくれたね」
「え?」
「影のこと」
このあとのことを言っているのだと察する。
今、こうして話している人が、数時間後には、違う人になると思うと、やっぱり不思議だ。
久しぶりに、その不思議さを感じていた。



