きみは溶けて、ここにいて【完】





「煮込むのとかやるから、下準備、保志さんがやってくれない? お願い」


 浜本さんの声に、どうして、と思っていたら、「手、汚くなるの嫌なんだよね」と吉岡さんが言う。

私だって、汚れるのは嫌だよ。
心では、しっかり、そう思っている。



 だけど、保志文子は断れない。
断れないんだ。イエスマンだから。


呪いのような、レッテルだ。


きっと、呪いの力を強めているのは、私自身だ。


影君、どうすればいいかな。

やっぱり、私は、都合がいい。許す必要なんてないと言っていたよね。

でも、やっぱり、傷つけたくないんだ。
傷つきたくないから。




「保志さん、そういうの上手そう。家庭的って感じがするし」

「あっちでみんな喋ってるから、ちょっと私たちも混ざってきたいみたいな、ね?」

「保志さん、喋るより料理の方が好きでしょ?」



 だけど、傷つけてないのに、すでに傷つけられている気がしていた。

二人の顔は、絶対に断られることなんてないんだという風な自信に満ちている。