「本当に仲の良いですね。それに素敵な娘さんですね、美織さん。お美しいだけでなく、自分に正直で、ブレない芯を持っていらっしゃる。まさに僕の理想の女性です」
「お褒めいただき光栄ですけどね……」
にこにこと笑顔を浮かべ、すらすらと言葉をつなぐ鮎川さんを一瞥しながら、私は言葉を返した。
「私はあなたみたいなクッソダサいおじさんと仲良くなる気は一切ありませんから! パパの親友だからどうしてもって言われて来てみたら、なによあなた! だいたい、本当に私に一目ぼれしたってんなら、少しでも好意をもってもらえるように身なりを整えてくるのが常識でしょ。どれだけ頭がよくてどれだけお金持ちか知らないけど、そんなのどうでもいいわよ! あなたみたいに人の気持ちを考えない人なんか、絶対に嫌!」
思わず早口でまくしたてる私に、隣で聞いていた父は目をまん丸くして言葉を失い、口をパクパクさせている。
ただ、鮎川さんはひとつも表情を変えることはない。私の目をじっと見つめていた。
「……若菜さんのおっしゃることは、ごもっともです。外見に無頓着、というのを言い訳に、今日という大切な日にも身なりに気を使うことができなかった。本当に恥ずかしい限りです。僕のこれまでの生き方そのものが、若菜さんに不快な思いをさせてしまったのだと、反省しています。申し訳ありませんでした」
穏やかな口調で深く頭を下げる鮎川さんを見て、私は少しだけいたたまれない気持ちになった。
はたからこの状況……小娘が礼儀正しい、中年男性の欠点をあげつらい、無遠慮にぶつけているという、なんとも礼を失した構図だ。



