「だから、想像して間違えるくらいなら、はじめから答えを聞いちゃえばいいのよ。私が好きな服装とか髪型なんて、聞かれたらいくらでも答えてあげるわよ」
「そ、それじゃあ……」
「あ、勘違いしないでね? まだ二回会っただけで結婚なんて、想像できないから。だから……今度は二人で、その……」
頬を赤らめる私を見て、鮎川は若菜に一歩近づき、目を輝かせながら手を握る。
「はい! どこでもお好きなところにお連れします!」
「ち、近いわよ!」
若菜はとっさに手を振りほどくと、表情を悟られないようにくるりと顔をそむけた。
「ご、ごめんなさい……」
「ドキドキするからやめてよ……」
「えっ? いまなんて……?」
「なんでもありません! ほら、お食事にしましょ!」
「……はい!」
その後ろでは、ほっと一安心した父の表情に私は声をかけると「いただきます」と伝えた。



