「い、いや、そうじゃないんです! 怖かったのは、若菜さんにもっと嫌われてしまったら、もっと呆れられてしまったら、……もう二度と会ってもらえなくなったらどうしようと思って……」
「鮎川さん……」
「…その時に気づいたんです。大事なのは、ただ単に外見を整えることじゃなくて、大切な人のために努力することなんじゃないかって。外見に気を遣うっていうのは、人の気持ちを考えることなんじゃないかって」
この人、めちゃくちゃ真面目……。真面目すぎるでしょ。
年下の私の言葉をまともに受けてるし。
「僕はこの一か月、これまでの人生で一番悩みました。どうしたら若菜さんに気に入ってもらえるだろう、どうしたら少しでも興味をもってもらえるだろうって。こんなに誰かのことを考えたのは、生まれて初めてでした」
鮎川さんはニコッと笑うと、私の方に歩み寄った。
「……悩みましたが、毎日すごく楽しかったんです。あなたのことを考えて過ごす毎日が、僕にとってはとても輝いていた。こんな気持ちは初めてでした。……正直に言うと、この格好であなたに会っていいのかも迷ったんです。これは、僕自身が考えて買ったものではないから。……でも、人の力を借りてでも、若菜さんに少しでもよく思われたいと願ってしまいました。そして僕は今日、あなたにもう一度、本気で気持ちを伝えようと思ってここに来ました」
私は、鮎川さんの言葉をすべて受け止めるように、その目をじっと見つめ返す。



