地味な不動産王とお見合いしたら、とんでもないイケメンで溺愛されています。





 ――そして、約束の一か月後。


「美織様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 仲居さんの案内で、私と父は料亭の中へと足を進めた。


「いいか、若菜。くれぐれもこの前みたいに、失礼な態度はとらないでくれよ」

「分かってるわよ」


 日本庭園の紅葉はすっかりと鮮やかに赤く染まり、周囲を囲む常緑に一層映えていた。

 本当に綺麗……。



「お連れ様は、お先にお待ちでございます」


 仲居さんはそう言うと、【花水木の間】と書かれた個室の前で立ち止まった。そして引き戸を少し開けて「鮎川様、失礼いたします」と個室の中の人物に声を掛けた。


「お連れ様がお見えになりました。」

「はい、どうぞ。」


 一か月ぶりに耳にする鮎川の穏やかな声に、私はふしぎと少しの懐かしさを感じる。会釈しながらニコッと笑う仲居さんに促され、どうしてか緊張する。

 個室に入ると、驚くほどのカッコいい男性がいた。