「はぁ~、なんか疲れちゃった」
「それはパパのセリフだよ、若菜……」
女将に見送られて料亭の駐車場を後にしながら、この数時間で少しやつれたような父親が、つぶやくように声を出した。
「っていうかパパ! 鮎川さんがあんなにダサいおじさんなら、先に言っておいてよ!」
「言ったら絶対に来てくれなかったじゃないか……」
「だからって娘をだますなんてサイテー!」
「そう言わないでくれよ……和樹くんはたしかに外見には無頓着すぎるところはあるが、それ以外は素晴らしい人物なんだ。仮に彼が資産家じゃなかったとしても、持ち前の努力を続ける姿勢とあの人柄は、パパにとっても若菜に紹介したいと思うくらい、いい男さ」
確かに外見以外はいい人っぽかった。
「それにしても無頓着すぎるけどね。まぁ、確かに人柄がすごくいいのはしゃべってて分かったけど……あんなに失礼なことばっかり言ったのに、一切怒らなかったし……それに、二十近く年下の私の一方的な意見を、ちゃんと受け止めてくれてたもんね……」
「だろう? 和樹くんはすごいんだよ!」
「だからすごいのはパパじゃないから。もういいからそういうの。」
なんでこんなに自慢げなの……自分のことじゃあるまいし。



