元ホストで、現在はホストクラブを数店舗経営する俺。


そんな昼夜逆の生活の俺にとって、
午前中の11時頃に掛かって来る電話程、腹が立つものは、ない。



今朝、ベッドに入り触ったまま寝落ちしたのか、
俺の手にはしっかりとスマホが握られていて。


先程から、それは電話を着信して鳴っている。



その相手は、篤で。


「…はーい」


隠す事なく、寝惚けた声でその電話に出た。



『寝てたか?
もう11時だぞ』


その声は、ちょっと苛立ってるみたいで。


こっちも、キレそう。


「さっき寝たばかりなの、こっちは」


最近は、朝の8時頃に眠っている。



『そんな生活してっから、お前結婚出来ねぇんだよ』


は?と思うけど、その篤の言葉は、
最近、その通りかな?と思う。


昔、本気で付き合っていた女子大生の彼女と別れてから、
その後付き合ったのは、生活リズムが同じで同業のような夜の仕事の女性ばかり。


なんとなく、そういう女性とは結婚迄行かなくて。


それはこちらが、とかではなく、向こうが俺を結婚相手に選ばない。


そういう女性の結婚に選ぶ相手は、どっかの大きな会社のサラリーマンとかで、安定している。


安定はないけど、金なら俺だってけっこう持ってんだけどな。


昔付き合ってたその本気だった女子大生の彼女には、
もっと普通の人と付き合いたいから、ってフラれたっけ。


「で、一体何の用?」


朝から、変に落ち込んでしまった。


篤の余計な一言で。