それでも、わざわざ聞いてくるってことは私に吐き出す機会を与えてくれているのかもしれない。弱音を吐くところがない大人のために。
さすがにそこまでお世話になるわけにはいかないと、私の理性がしっかり仕事をしてくれているんだけども。
「よくある話だよ。彼氏から振られちゃって仕事も上手くいかなくてってやつ!だからちょっと気分が下がっちゃてて。まさか、自分がそういうタイプだって思わなかったよね!あははっ!」
明るく笑うことで、重苦しくなった空気を飛ばしてしまいたかった。
空気の読める男子高校生ならのってくれると思っていた。
しかし、残念ながらこちらの様子を伺う男子高校生の顔が晴れることはなく。
むしろ眉間にしわが寄って……そしてなぜかなにかをこらえるような表情を浮かべた。
……えっと、どういう感情でその顔になっているんだろう。なにも悪いことはしてないはずだよね?無礼は働いていないよね?
と思考を巡らせていると、
「―――泣いてもいいと思うんです」
男子高校生は優しく諭すような声を出し、私の頬に手を伸ばした。



