「もちろんです。いつ会えるかわからないので次の日から持ち歩いていたんですけど、結構早く会えましたね」
「そうだね、ちょっとびっくりしちゃった。これ、返してくれてありがとね。今日はどっちも忘れちゃったから困ってたんだ」
「この前と真逆ですね」
「うん、情けないよ」
以前自分が貸したものが返ってきただけとはいえ、年下に手を煩わせてしまった罪悪感でまた自分のことが嫌いになる。
だけど、しょぼくれる私に対して男子高校生は顔を横に振り、私の顔を覗き込んだ。貫くような強い眼差しにたじろいでしまう。
な、なに。
もしかして、さっきまで考えてたセクハラな思考が実は見透かされていて責められるのだろうか。
訴えられて社会的に生きていけなくなるのだろうか。
それだけは切実にやめてほしい……この前の男子高校生のように逃げ出してしまうのは有りなのかな。有りだよね。
よし、何か言われる前に逃げよう。
そう決意したけれど、私が走り出すよりも先に男子高校生の口が開き、
「あなたは情けなくなんかありません。少なくとも、俺にとって憧れで素敵な人です」
……予想に反してなぜか褒められた。ほんと、なぜ。



