「わかってもらえたようでなによりです。年下だからって眼中になかったら困るので」
「うぐっ……」


不機嫌顔からの微笑みは反則だと思います。
前に空を睨んでいたときはとげとげしたタイプかと思っていたのに、意外と礼儀正しいし怖くない。そして可愛い。


ギャップが作用して傷心中の私への効果は抜群だ。
本当によろしくない。非常にまずい。


「髪、ある程度乾いたみたいです。あと、これ。この前借りたタオルと傘です。ありがとうございました」
「へ……?」
「なに固まってるんですか?親切なあなたが貸してくれたものですよ。心配しないでください。俺には折りたたみ傘があるんで」
「えっと、私に返すために持ち歩いてた……とか?」


まさか今日、貸したものが返ってくるとは思わなかった。
というか、返ってくるのを期待していなかった。だってまた会えるかもわからないし。


それがたまたま再会した日に無事返却されたのだから、私の思考はなんら不自然ではないはず。