「どんな状況ですか?」

「殺しだ。胸を真っ正面から一付きで刺されている」

「そうですか……」

 わたしは遺体の上に掛けられた青いビニールシートを捲り、遺体の状況を確認した。
 少し黙祷を捧げた後、わたしは「被害者の身元は分かりますか?」と課長たちに声をかけた。

「いや、財布やスマホが盗まれていて、身元が分かるものは何も所持していなかった」

「そうですか……」

 財布がやスマホが盗まれているということは、怨恨の線……? それとも……。

「鑑識さん、すみません」

「はい?」

 わたしは近くにいた鑑識さんに声をかけた。

「あの、死亡推定時刻は何時ですか?」

「まだ正確には分かりませんが……。恐らく昨夜の22時から24時の間と見ています」

 鑑識さんのその答えに、わたしは「そうですか……。ちなみに凶器は見つかりましたか?」と更に問いかけた。

「いえ、まだ見つかっていません」

「そうですか……。ありがとうございます」

 凶器が見つかっていない……。ということは、犯人が凶器を持ち去った……?
 それとも、犯人がどこかに隠した……?