絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!

(アリシアが、名誉や権力を欲して虚偽のことを言っただと?)

 あり得ない。俺はカスペル陛下の言葉を否定する。
 いつまでも見つからない聖女候補。そんな中でようやく見つけたアリシアは、まごうことなき聖女候補だ。俺自身が反応を示す聖石を見たのだから、間違いない。
 それに、ほんの僅かな期間とはいえアリシアと交流し、彼女がそんなことをする人間にはどうしても思えなかった。

 ──聖女を見つけ出した者には、大きな名誉が与えられる。

 カスペル陛下が周りの予想以上に強硬な姿勢を見せたのは、むしろこちらが原因な気がした。自分が排除した元王族にいい意味での注目が集まるのを嫌ったのだろう。

(仕方がない。こうなったら、ヴィラム殿下に協力を仰ごう)

 現王太子であるヴィラム殿下は、俺から見ると甥にあたる。二十四歳の俺に対し、ヴィラム殿下は二十歳。歳が近いこともあり、昔から仲がよかった。俺がセローナに旅立つ際にも『父上が済まなかった』と謝罪したのはヴィラム殿下だ。