次の瞬間、部屋のドアが勢いよく開く。そこから中になだれ込んできたのはイラリオさんだ。

「アリシア、大丈夫か?」

 イラリオさんは酷く青い顔をしていた。きっと、聖女光臨の儀での一連の出来事を聞いたのだろう。

「閣下、いけません。閣下とこちらの女性の面会は──」
「黙れ!」

 後ろの衛兵が焦ったように言いつのるのを、イラリオさんが恫喝する。

「アリシア、もうこんなところには用はない。帰ろう」
「閣下、いけません!」

 衛兵が再度イラリオさんを止めようとしたとき、「騒がしいと思ったらお前か」と彼らの背後から声がした。衛兵達がはっとしたように頭を下げる。イラリオさんはしっかりと直立したまま、そちらを見据えた。

「陛下、アリシアを解放してください」

 イラリオさんがそう言った瞬間、国王陛下は不愉快げに目を眇める。

「口の利き方に気を付けろ、イラリオ」
「…………。陛下、アリシアを解放してください。お願いします」

 イラリオさんは唇を引き結ぶと、片膝をついて国王陛下に跪く。それを見た国王陛下は満足げに口の端を上げた。