絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!

「ヴィラム殿下、大丈夫です。俺は外の控えの間で待っています。心遣いに感謝します」

 ヴィラム殿下と呼ばれた男性は何かを言いたげにイラリオさんを見返したが、何も言うことなく小さく頷く。
 イラリオさんはくるりと振り返り、私のほうに歩み寄った。

「アリシア、俺は聖職者ではないから聖女光臨の儀には同席できない。控えの間で結果を待っている。ずっとそこにいるから、何かあればすぐに言ってくれ」
「はい、わかりました」

 私はぺこりと頭を下げ、ここまで送ってくれたイラリオさんにお礼を言う。そして、四人の聖女候補達の隣へと立った。

「あなたがセローナ大聖堂から推薦された聖女候補のアリシアさんですね?」

 一際豪華な司祭服を着た初老の男性がゆっくりとした口調で話しかけてきた。さっき、隣に立つ司教が〝大司教〟と呼んでいるのを聞いたので、ここチェキーナ地区の大司教なのだろうと思った。

「はい。私がアリシアです」

 セローナ大聖堂と聞いて、不思議な縁を感じる。母はセローナ地区出身だったと、まだ元気な頃に聞いたことがある。大聖堂の話も時々してくれた。黄土色の石造りの重厚な建物だと。

「あれが平民出身の……」