初めて足を踏み入れる大聖堂は、荘厳な雰囲気ながらもまさに精霊の世界を思わせるような異世界感が漂っていた。

「わー、すごい」

 一歩足を踏み入れた瞬間、思わず感嘆の声が漏れた。
 精緻な彫刻が施された柱や梁には金箔が貼られ、その合間を埋めるように天井や壁中に美しい絵が描かれていた。見上げてよく見ると、一番中心になるところにひとりの美しい女性とそばに控える男性、そして、大きな動物が描かれていた。

「あれは、聖女と聖騎士、そして聖騎士の相棒である聖獣を描いたものだ」

 私がその絵を気にしているのに気付いたのか、イラリオさんが小さな声で囁く。

「聖女と聖騎士と聖獣」

 私はイラリオさんに言われた単語を口の中で呟く。

「聖獣は神聖力を持った聖なる獣だ。その姿を見ることは滅多になく、大変貴重かつ尊い存在でもある。そして、初代聖女を守っていた聖騎士は聖獣を連れていたと言われている」

 イラリオさんが、補足するように説明した。