今はヴィラム殿下にも打ち明けることはできない。しかし、アリエッタの心の準備ができたときは必ず国に届ける。それまでは俺の預かりにしてほしかった。

 ヴィラム殿下は暫く考え込むように黙り込んでいたが、ようやく口を開く。

「わかりました。他でもないイラリオが言うのなら、信用に足りるでしょう」
「ありがとうございます」

 あの光のことは、今は聖女であるルイーナの力によるものだとされている。それが覆るとなると、それこそ大問題になるのはヴィラム殿下もわかっているのだろう。

「今回の一連のことは、私から父上に上手く報告しておきます」
「お願いします」

 俺はヴィラム殿下に深々と頭を下げる。

「イラリオ」
「はい?」
「あなたは今はこんな辺境にいますが、私はイラリオのことを本来なら国の中枢に戻るべき人だ思っている」

 ヴィラム殿下は真摯な眼差しでこちらを見つめる。

「ありがたきお言葉です。でも、俺は今の生活が気に入っているので気持ちだけ受け取っておきます」

 俺は小さく微笑むと、もう一度頭を下げた。