向かいのソファーに座るヴィラム殿下は、強張った表情のまま深々と俺に頭を下げる。

「いや、大丈夫です。怪我も治りましたし」

 笑って腕を勢いよく回してみせると、ヴィラム殿下は少しだけ口元を綻ばせた。

「──ところで、あの不思議な光のことなのですが」

 ヴィラム殿下がゆっくりと口を開く。
 本題が来たな、と思った。アメイリの森にいたヴィラム殿下も当然あの不思議な現象は目にしたはずだ。

「私にはどうにもルイーナが祈ったようには見えなかったのです。だからこれは想像なのですが、もしかすると聖女は別の──」
「ヴィラム殿下!」

 非礼を承知でヴィラム殿下の言葉を遮る。

「あの光の件は、俺に預からせてもらえませんか?」
「イラリオに?」

 ヴィラム殿下は訝しげに俺を見つめる。

「心当たりがあるのですか?」
「今は申し上げることができません」

 俺はまっすぐにヴィラム殿下を見返す。