アリエッタが泣き叫ぶ声が聞こえる。

「リーン、エリーを連れて安全な場所に逃げろ」

 薄れゆく意識の中でザグリーンに伝えたそのとき、不思議なことが起きた。
 アリエッタの体が虹色に包まれて、代わりに現れたのは若い女だった。

(アリシア?)

 それは、俺が聖女候補として聖女光臨の儀に連れて行き、結果的に亡くなったアリシアそのものだった。

 アリシアから発せられた七色の光はまっすぐに天に伸びる。
 遥か上空で放射状に広がった。それに合わせ、魔獣によりまき散らされた瘴気が急激に浄化されてゆく。精霊達が一斉に祝福を贈り、辺り一帯が煌めきに包まれる。

(なんて美しいんだ)

 俺は地面に仰向けに倒れたまま上空を見上げる。

 ふと体に違和感を覚えた。痛みがないのだ。恐る恐る、動かないはずの両腕に力を入れる。腕は抵抗なく持ち上がった。