──神様、イラリオさんを助けて。そして結界を再生させ、この世界を救ってください。

 私は必死に祈りを捧げる。すると幼児の姿をしているときとは比べものにならないほどの神聖力が体から溢れ出し、周囲が覆われるの感じた。それが最後の記憶だ。

 私ははっとして自分の両手を目の前にかざす。六歳の子供の手だった。

(全部、夢?)

 わけがわからない。

「イラリオさん? ここは……? 私はどうしてここに? イラリオさんの怪我は?」

 矢継ぎ早に質問する私を見つめたまま、イラリオさんは言葉を詰まらせる。

「エリーは気を失っていたからザグリーンがここまで運んだ。怪我は、その……回復薬を飲んだ」
「そっかー、よかった」

 じゃあ、やっぱりあれは夢じゃなかった?
 とにかく、イラリオさんが無事なことにホッとする。存在を確かめるように手を握って頬ずりすると、イラリオさんはひゅっと息を呑む。そして、おずおずと頭を撫でてきた。

「魔獣は?」
「もう大丈夫だから、安心しろ」
「うん」

 私は素直に頷く。