イラリオさんが叫ぶ。魔獣が私のほうに走り出そうとした瞬間、「グワアアァ」と悲鳴のような嫌な泣き声が聞こえた。私を逃がすために、イラリオさんが剣を魔獣に突き立てたのだ。怒った魔獣が暴れ、剣を握りしめたままイラリオさんが地面に吹き飛ばされる。魔獣は倒れたイラリオさんに飛びかかると、それを避けようと剣を構えたイラリオさんの腕ごと噛みついた。

「イラリオさん!」

 目の前の状況に、私は悲鳴を上げる。

(死んじゃう。このままだとイラリオさんが死んじゃう!)

 そう思うのに、私には何もすることができない。神聖力が強くても、何の役にも立たない。

(なんでこんなことに?)

 きっと私のせいだと思った。
 私がいなければ、イラリオさんは魔獣が聖獣だとザグリーンに教えられることもなかったのだから、王都からあの人達が来ることもなかった。

 ザグリーンは、私が強く望めば元の姿に戻れると言っていた。こんなことなら早く戻るべきだったのだ。そうすれば私は処刑されたかもしれないけれど、イラリオさんがこんな目に合うことはなかったのに。

「いや、いやあああー!!!」